私は今までに映画やドラマを使ったインプットの利点について記事をいくつか書いてきました。
第二言語取得論に基づいても、自分の経験からも効果があると思うからです。
勿論、個人個人の学習タイプによって、必ずしも全員に100%効果があるとは言い切れませんが、自分の学習タイプと擦り合わせ、
上手く活用すればこんなに良いインプットはないと思っています。

そして先日、英語発音コーチングの受講者の方が嬉しい報告をしてくれました。

彼女は、初めは映画やドラマのインプットに対して、あまり乗り気ではありませんでした。
理由を聞くと、
・なかなか時間が取れない
・どれが英語学習に向いているのかわからない
ということでした。
しかし、更に詳しくお話を聞いていくと実際のところ
・効果がよくわからない
・あまり勉強しているように思えない
・家族の目が気になる
という罪悪感が原因となっているようでした。

だから、まずはこのマインドセットを一緒に変えていくことから始めました。
・「勉強」に引き戻されない(私は言語をできる限り「勉強」から切り離してもらうようにしています)
・観ていて純粋に楽しいもの、先が気になるものを観る(1回で終わってしまう映画よりドラマが望ましい)
・生きた英語の大切なインプットを行っていると自信を持って、胸を張って観る

この3点を繰り返し伝え続けました。


コーチングの毎週のセッションでは、色々ある1週間のタスクの振り返りと合わせて
このインプットから得たものや疑問などもシェアしてもらっています。

そしてこのルーティンを数回繰り返した頃、明らかな変化が現れてきました。

それは、「ドラマの中の会話がだんだん聞き取れるようになってきた」、という変化に加えて、
彼女の定型文や、使用頻度の多いフレーズに対する気づきが断然増えたことでした。
例を挙げると、

“What if 〜” 
“It’s a tough call.”
“Can you be more specific?”

あとは、相槌としてよく使われる
“Totally” “Absolutely” “sure”

などを「この表現よく使いますよね。」と頻度が高いものからどんどん気になり始めたそうです。
そして、これらをどうにかして「使ってみたい!」という気持ちが高まり、会話練習で使うチャンスを待つようになりました。


さらに、コーチングが5週目に入る先日、また次の段階の変化が見えました。
それは、いつものように彼女のドラマインプットをシェアしてもらっていた時、

「今回はやたらと”I’m supposed to〜” (I was supposed to〜) が聞こえました。これって・・・」
と話が始まったのですが、
「こういう、こういう、こういう感じで使うんですよね?こういう時とか・・・」
と、自分が使える場面を想定し、そこに当てはめて意味を確認してくれました。

思わず拍手をしてしまいました!!!!

なぜなら、彼女は
“be supposed to”=”〜しなければならない”
という「勉強」をしたのではなく、
ドラマの登場人物の立場や、背景、周りとの関係からニュアンスを掴み、自分の場合に当てはめて
このフレーズを自分のツールとして体得していたからです。

直訳した「意味」ではなく、感じ取った「ニュアンス」です。

これは、背景、歴史、人間関係、感情、さまざまなものを全て含んで言語を捉えることができる
映画やドラマだからできることだと思うのです。

実際、私たちがコミュニケーションで使う言語も、このような要素から独立しては存在していないはずです。

だから、英語圏や英語が日常的に話される環境で生活していないのであれば
もっと英語を話せるようになりたい!伝えられるようになりたい!と思っている人にとって
映画やドラマはとても効果的なインプット法なのです。

初めは懐疑的だった彼女も、今では忙しくても
どこかで時間を見つけて(短い時間でも)
毎日インプットを続けるようにしているそうです。

今後もどのような変化が現れるのか、楽しみです。